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10-03-4: 電位の公式の導出

点電荷のつくる電位の公式\phi=k\frac{Q}{r} を証明します      

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 電位\phiとは3-03-1の通り、1Cあたりの持つ位置エネルギーだから、位置エネルギーの定義(10-03-2)
 「ある位置から基準点まで保存力がすることのできる仕事」         (1)
から始めることにしよう。この定義は、重力による位置エネルギーなら「高さhから高さ0の所(基準点)まで重力がすることのできる仕事(1-17-1)」(すなわちmgh)である。この単元で導出したいのは点電荷Q(Q≷0)のつくる電位(1Cあたりの持つ位置エネルギー)\phiの公式で、この場合、基準点を無限遠に取るのが慣習だから(理由は最後に述べる)、電位の定義は(1)にならって
 「点電荷Qの位置より距離rへだてた位置から、無限遠(基準点)まで、1Cあたりの電気力のすることのできる仕事」
となる。ところが、1Cあたりの電気力とは電場(3-02-1)に他ならないから、結局電位\phiとは、
 「Qより距離rへだてた位置から無限遠まで電場\vec{E}のすることのできる仕事\: (2)
として求まる。この計算をするために、図1のようにQの位置を原点Oとするx軸を取り、任意の位置xに+1C及び電場のx成分E_xを書く。
 電場\vec{E}の向き(3-02-1)は、Q>0ならQから+1Cへの斥力の向きでE_x>0(青い矢印で+x方向)、Q<0ならQから+1Cへの引力の向きでE_x<0(緑の矢印で-x方向)(もちろんE_y=0)  (☆)

図1

 ここで3-02-1より \displaystyle E_x=k\frac{Q}{x^2}\:                    (3)
(3)でQ≷0ならE_x≷0(複合同順)なので、(☆)に述べたことと合っている。 
 さて、(3)のE_x(1Cあたりに働く力)はx^2に反比例で、一定ではない。ゆえに、仕事W=(力の移動方向成分)×(距離)(1-16-1)とすることはできない。そこで、力の移動方向成分Fが変化していく場合のFのする仕事=F-xグラフの面積 の考え方(1-18-1)を用いて、
 E_x(1Cあたりに働く力)のする仕事=E_x-xグラフの面積       
と計算することにする。ということは、
 (2)の電位\phi=(Qより距離rへだてた位置から無限遠まで電場\vec{E}のする仕事)
       =(x=rからx=\inftyまでE_x-xグラフの囲む面積)\;\:     (4)
 図2にE_x-xグラフを示した。(3)の通りx^2に反比例、青い曲線がQ>0E_x>0のグラフ、緑の曲線がQ<0E_x<0のグラフである。(4)の面積を、Q>0の場合について赤色で囲ってある。 [ F-xグラフv-tグラフの単元の説明通り、赤く囲まれたグラフの面積を、横幅の微小な長方形のいくつもの連なりで置き換える階段グラフ(の一部)を示してある。斜線を施した長方形の面積はE_x(1Cあたりに働く力)×\Delta xだから、(1Cあたりの)微小仕事を表している。] 
 ところで、グラフの面積は定積分で表せる。(4)の定積分は具体的には、積分の中身(被積分関数)を縦軸の量E_x、積分変数を横軸の量x(dx)、積分の下端・上端をそれぞれx=r,\,\inftyとして、
 電位\displaystyle \phi=\int_{r}^{\infty}E_xdx [ (3)を代入 ] =\displaystyle \int_{r}^{\infty}k\frac{Q}{x^2}dx\,          (5)

図2 

 (5)でQ<0のとき\phi<0であるが、このとき(1Cあたりの)力E_xは負の向き(E_x<0)、移動の向き(x=rからx=\infty)は正の向き、つまり力の向きと移動の向きが逆だから、負の(1Cあたりの)仕事(1-16-1)、すなわち\phi<0となり適している。
 (5)より \displaystyle \phi=kQ\int_{r}^{\infty}\frac{1}{x^2}dx=kQ\left[-\frac{1}{x}\right]_{r}^{\infty}=kQ\left(-\frac{1}{\infty}+\frac{1}{r}\right)  (6)
 \displaystyle \frac{1}{\infty}→0なので \displaystyle \phi=k\frac{Q}{r}             (*)
 これが3-03-1で用いた点電荷のつくる電位\phiの公式である。

 ポイントすぐ下の初めの段落で「基準点を無限遠に取る」といった理由が、この時点でハッキリする。仮に無限遠x=\inftyではなく、どこか有限の位置x=r_0を基準に取ると、(5)の積分は
 \displaystyle \phi=\int_{r}^{r_0}k\frac{Q}{x^2}dx となる。すると(6)の計算は
 \displaystyle \phi=kQ\int_{r}^{r_0}\frac{1}{x^2}dx=kQ\left[-\frac{1}{x}\right]_{r}^{r_0}=kQ\left(-\frac{1}{r_0}+\frac{1}{r}\right) となり、電位の公式がいかにも覚えづらい式\displaystyle \phi=kQ\left(-\frac{1}{r_0}+\frac{1}{r}\right) となってしまう。そう、点電荷のつくる電位の基準点を無限遠に取る理由は、公式を覚えやすくする( (*) )単なる便宜上なのである。

Posted by AKJ