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1-32-1: 2体問題 <例題> ー 力学攻略の基本 第4弾

2体問題はしばしば運動量保存則がカギとなります                        

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ポイント             
・ 2体問題は、2体全体に広く目を配って「外力はどれか?」と問おう 

 2体問題とは、2物体が互いに絡み合いながら運動するタイプの問題で、入試の頻出テーマである。
 例えば図1。なめらかな曲面をもつ質量\(M\)の台をなめらかで水平な床の上に置き、その曲面上の床から高さ\(h\)の所に質量\(m\)の小球を置く。初め台と小球をともに手で支えて静止させておき、両方から同時に静かに手をはなすと、小球は曲面を下っていく。小球が床に達したときの小球及び台の速さを求めてみよう。重力加速度を\(g\)とする。
 床に達したときの小球、台の速度を図2のように右向きを正としてそれぞれ\(v,V\)と図示する、おく。ただし、速度が負の値で求まったなら負の向きへ動くという意味であって、決して正の向きへ運動中という意味の図ではない(この図の書き方は1-31-2と同様である)。

図1

 ここで、

例題 

 \(v,V\)を求めよ。

図2

解答・解説

 さて、力学という分野は何といっても1-08-1: 力学攻略の基本 が根幹である。つまり、まずは軸と力を書き込む(図3)。
 次に1-08-1にならって\(ma=F\)と行きたいところだが、曲面を下るにつれ次々と小球の加速度の向きが変化していく(等加速度ではない)し、そもそも曲面の形状も与えられているわけではない。\(ma=F\)では明らかに行き詰まってしまう。
 そこで、2体問題を解くときには、2体全体に広く目を配って「外力はどれか?」と問う意識付けが極めて重要になる。
 1-31-1でやった通り、外力とは注目している2物体(台と小球)以外から働く力だから、図3の赤い矢印(地球から小球に、床から小球に)は外力である。
 一方、内力とは注目している2物体どうしで及ぼし合う作用反作用のペアだから、青い矢印。
 すると、とっさに外力が鉛直方向に揃っている、水平方向には外力がない、と気付くであろう。
 あとは、水平方向に外力がないから水平方向の運動量保存が成り立つ1-31-1)と行ければ、シメタもの。
 これと力学的エネルギー保存を連立すれば、式が2つ、未知数が\(v,V\)の2つで解ける。
 図1をまえ状態、図2をあと状態として、
              あと      まえ
 水平方向の運動量保存  \(mv+MV\)  \(=\)  \(0\)   (1)
 力学的エネルギー保存 \(\displaystyle \frac{m}{2}v^2+\frac{M}{2}V^2\) \(=\) \(mgh \, \)  (2)
  [ 床を高さ0に取って、まえ状態の位置エネルギーは\(mg0+Mg0\)という意味 ]

図3

 (1)より \(\displaystyle V=-\frac{m}{M}v \)               (3)
 (2)に代入 \(\displaystyle \frac{m}{2}v^2+\frac{M}{2}\frac{m^2}{M^2}v^2 =mgh \)
  ∴ \(\displaystyle \frac{m}{2}v^2 \left( 1+\frac{m}{M} \right)=mgh \)   ∴ \(\displaystyle \frac{m}{2}v^2\frac{M+m}{M}=mgh \)
  ∴ \(v=\)  \(\displaystyle \sqrt{ \frac{M}{M+m}2gh } \) 
 (3)より   \(\displaystyle V=-\frac{m}{M} \sqrt{ \frac{M}{M+m}2gh } \)  
 \(V<0\)と求まる理由は、図3の小球から台に働く\(N\)が斜め左向きで、台が(\(x\)軸を右向き正として)左向きに押されるからである。

Posted by AKJ