10-04-1: 力学的エネルギー保存則の証明
必要なら10-03-1: 保存力、10-03-2: 位置エネルギー の単元も学習しておきましょう。 → <続き>は10-04-2へ
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1⃣ 1質点の力学的エネルギー保存則の証明(質点とは、その質量は考えるが大きさを無視する物体のこと。よく「小球」とも表現される) 2⃣ 2質点の証明 の順に説明していく。
1⃣ 仕事を保存力のする仕事\(W_保\)と非保存力のする仕事\(W_非\)に分類しておく。すると、
運動エネルギー変化=仕事 より \(K_{あと}-K_{まえ}=W_保+W_非\) (1)
位置エネルギー\(U\)について、10-03-2の通り \(W_保=U_{まえ}-U_{あと}\) が成り立つから
\(K_{あと}-K_{まえ}=U_{まえ}-U_{あと}+W_非\)
∴ \((K_{あと}+U_{あと})-(K_{まえ}+U_{まえ})=W_非\)
力学的エネルギー\(E=\)運動エネルギー\(K+\)位置エネルギー\(U\) だから
\(E_{あと}-E_{まえ}=W_非\) (2)
これは、1-17-2で扱った 力学的エネルギー変化=非保存力のする仕事 である。
特に保存力のみが仕事をする(非保存力が仕事をしない)場合\(W_非=0\) 。すると(2)より
\(E_{あと}=E_{まえ} \; \) (3)
これは、1-17-2の通り 保存力のみが仕事をするときには力学的エネルギーは保存する である。よって証明された。
この証明の出発点に用いた(1)は、1-16-3で述べた通り、法則としては運動方程式だけを用いて得られた式である。ここで運動方程式は1-05-1の通り「宇宙の根本原理」であるから、宇宙で起こっている現象について例外なく成り立つ。ゆえに、運動方程式から直接得られる(1)もつねに例外なく成り立つ。ところで(1)と(2)は同値である((1)から(2)を導いたが、(2)から逆にたどると(1)に戻れる)。ということは、(2)もつねに成り立つ。
(1)の右辺は\(W_保\)も\(W_非\)も両方入っている。したがって、(1)を用いるときには保存力・非保存力全ての仕事を考慮しなければならず、そのときの左辺は運動エネルギー変化である。
(2)の右辺は\(W_非\)だけが入っている。しかし、左辺では運動エネルギーのみならず位置エネルギーの変化も考慮しなければいけない。
(1)と(2)は同値だから、入試問題を解くときには(1)(2)どちらを用いてもよい。ただし、(1)では \(W_保=U_{まえ}-U_{あと}\) の関係を利用すること。
一方(3)はその1行下に記した通り、つねに成り立つ式ではなく、「保存力のみが仕事」という条件付きで成り立つ。
2⃣ 2質点の場合も 力学的エネルギー変化=非保存力のする仕事 であり、
保存力のみが仕事をするときには力学的エネルギーは保存する。
ただし、1つ押さえておきたい重要事項が2質点の場合にはある。それは次の単元10-04-2で扱うことにする。