3-12-1: コンデンサーへの誘電体の全挿入
この単元はコンデンサーの3大公式の格好の練習題にもなっています!
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ポイント
誘電体の比誘電率を\(\epsilon_r \)、誘電率を\(\epsilon \)、真空中のコンデンサーの容量を\(C\)とする。
コンデンサーの極板間を誘電体ですき間なく満たすときの容量\(C’\)について
(1) 真空のときと比べて容量が\(\epsilon_r \)倍になる:\(C’=\epsilon_r C \)
(2) \(\displaystyle C’=\frac{\epsilon S}{d} \)
図1はコンデンサーの極板間を誘電体(赤色)ですき間なく満たした状況。3-08-1のコンデンサーの3大公式に基づいて、ポイント(1)(2)を示そう。
第1公式:電荷から電場ができる。真空中の電場\(\displaystyle E=\frac{Q}{\epsilon_0 S} \)
誘電体中の電場は3-11-1の通り \(\displaystyle E’=\frac{1}{\epsilon_r} E \) だから、\(\displaystyle E’=\frac{1}{\epsilon_r}\frac{Q}{\epsilon_0 S} \)
第2公式:電場に沿って電位が下がる。電位差\(\displaystyle V=E’d=\frac{1}{\epsilon_r}\frac{Q}{\epsilon_0 S} d=\frac{1}{\epsilon_r}\frac{d}{\epsilon_0 S} Q \)
第3公式 : \(Q\)は\(V\)に比例。\(Q=C’V\)と書ける。
よって \(\displaystyle C’=\frac{Q}{V}=\frac{\epsilon_r\epsilon_0 S}{d}\)
\(\displaystyle C=\frac{\epsilon_0 S}{d}\) だから \(C’=\epsilon_r C \) これがポイント(1)である。
3-11-1の通り \(\epsilon_r\epsilon_0=\epsilon\) だから \(\displaystyle C’=\frac{\epsilon S}{d} \) これがポイント(2)である。
真空中のコンデンサーの容量が\(\displaystyle C=\frac{\epsilon_0 S}{d}\) であるのに対して、誘電体を極板間にすき間なく満たしたときの容量が\(\displaystyle C’=\frac{\epsilon S}{d} \) 。これが真空の誘電率\(\epsilon_0\)、誘電体の誘電率\(\epsilon\)というネーミングのそもそもの意味合いである(3-05-1の問題提起に対する答)。
ちなみに、誘電体はなぜ役に立つのかと言うと、大きく2つの理由がある。
第1は容量が\(\epsilon_r \)倍に増えること。コンデンサーは電荷をたくわえる装置で、\(Q=CV\)だから容量\(C\)が大きいほど\(Q\)が大きく、電荷をたくわえる装置としての有用性が増す。
第2は、本来極板どうしは極板間引力で引き合っているので、放っておくと正極板と負極板が接触して「中和」してしまう。ところが電気を通さない誘電体を正・負極板の間に挟めば中和の心配はない。
市販のコンデンサーは、その種類も大きさも実に多種多様であるが、ほんの一つだけ例を挙げると ―― 2枚のアルミ箔を極板として、フィルム上の誘電体をアルミ箔・誘電体・アルミ箔・誘電体の順序で重ね、例えば幅1cm程度の「のり巻き状」に巻いたコンデンサーがある。こうすると、幅1cm程度でも極板面積\(S\)がかなり広く取れ、しかも極板間隔\(d\)がかなり狭くなり、容量\(\displaystyle C’=\frac{\epsilon S}{d} \)がかなり大きく取れる。