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3-05-1: ガウスの法則

ガウスの法則はコンデンサーへの重要な布石となります。しっかり理解しましょう → <続き>は3-05-2へ                 

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ポイント
(1) 電気力線は電場に垂直な単位断面積あたり\(E\)本書く。
(2) ガウスの法則 ある閉曲面内の電荷の合計が\(Q_\text{in}\)[C]であるとき、その閉曲面を貫く電気力線の総数
  \(\displaystyle 4\pi k Q_\text{in}=\frac{Q_\text{in}}{\epsilon_0}\)
 ただし、閉曲面を力線が貫き出るときは+1本、貫き入るときは\(-1\)本と数える。
 \(k\): クーロンの法則の比例定数 =9.0×10\(^9\)[N\(\cdot \)m\(^2\)/C\(^2\)]
 \(\epsilon_0\): 真空の誘電率 =8.9×10\(^{-12}\)[C\(^2\)/(N\(\cdot \)m\(^2\))]
 \(\displaystyle k=\frac{1}{4\pi \epsilon_0}\) なる関係がある。

青が閉曲面。閉曲面内部の電荷は⊕⊖、外部の電荷は+ー。
閉曲面外の電気力線は実線矢印、
内の力線は点線


□ ポイント(1)について
 これはそういう規約(ルール)を取り決めるという意味である。電場\(E=\)3[N/C]なら\(\vec{E} \)に垂直な 1m\(^2\)あたり電気力線を3本書き、\(E=\)8[N/C]なら8本書く(図1)。つまり力線の密集度で電場の強さ\(E\)を表現しようという規約である。なお、電場\(E=\)3.48[N/C]のように整数でない場合はどうか。数量的な規約(1)は保つとして、図示するときは3.48本書くなどできないから四捨五入の3本書くというように、図示的には「大体」の規約だと思ってもらいたい。

図1 矢印が電気力線

□ ポイント(2)について 
 この法則は初見ではとっつきにくいと感じる人が多いのではないか。順に説明していこう。
 まず「閉」曲面とは、要するに穴の開いていない曲面のこと。風船の表面は通常閉曲面だが、針を刺してパンクさせれば「開」曲面になる。
 単純な閉曲面である球面を例に取り、その内部に1個の点電荷\(q\)(>0)[C]がある場合を考察しよう(図2)。半径\(r\)の球面上で電場\(\vec{E} \)の向きは半径方向つまり球面と垂直な方向だから、ここでの電場の強さ\(\displaystyle E=k\frac{q}{r^2}\)が球面を貫く1m\(^2\)あたりの力線の本数である(ポイント(1)より)。また、球面の表面積は\(4\pi r^2\)(球の体積は \(\frac{4}{3}\pi r^3\)と数学で学ぶ)。すると、
  \(\displaystyle\) 閉曲面(球面)を貫く力線の総数 \(=\) 1m\(^2\)あたり\(E\)本 × 球面の表面積 \(\displaystyle =k\frac{q}{r^2}×4\pi r^2=4\pi kq\) 本
となってポイント(2)の正しいことが分かる。

図2 実線矢印が球面外の電気力線、点線が内の力線

 ところが、である。結論から先に言うと、ポイント(2)ガウスの法則は、閉曲面の形がどんなに複雑であっても成り立つし、閉曲面内に電荷がどんなに多数あっても成り立つ(ポイントの図)。このとき閉曲面「外」の電荷は\(Q_\text{in}\)には含めない。たとえ閉曲面「外」の電荷が閉曲面を貫く力線に関与していたとしても、閉曲面を貫く力線の総数は閉曲面内の電荷を\(Q_\text{in}\) として\(4\pi k\) \(Q_\text{in}\) 本であるというのだ(!)。
 このガウスの法則は、静電気の場合すなわち電荷が動かない場合、大学レベルで(丹念に議論すれば高校物理でも)クーロンの法則から証明できる。しかし、電荷が動く場合は宇宙の根本原理に位置付けられ、証明がない。つまりガウスの法則は覚えなければならない。上記の「球面内に点電荷」がある場合の証明を納得したら、覚えよう。ポイント(2)に記した通り\(\displaystyle 4\pi k=\frac{1}{\epsilon_0}\) (イプシロンゼロと読む)だから、総数\(\displaystyle \frac{Q_\text{in}}{\epsilon_0} \) 本の形でもよく使う。 [ ガウス則は電荷が動く場合も動かない場合も成り立つ宇宙の根本原理 ―― 電気分野の出発点の式。クーロン則は電荷が動かない場合だけ成り立つ出発点の式。ただ、高校物理で動く電荷のつくる電場を考察することはない(扱えない)。ということで、3-01-1の通り高校ではクーロン(電場)の法則を電気分野の出発点の式とする。 ]
 \(\epsilon_0\)に真空の誘電率という名を付けた意味合いについては、3-12-1で述べる。

 さて、ガウスの法則は何の役に立つ?次の単元3-05-2で応用例を扱っていこう。

Posted by AKJ