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2-11-1: 弦の固有振動

重ね合わせの原理で生じる現象の最後 ―― 両端に節・腹の条件の付いた定常波「固有振動」 → <例題>は2-11-2へ        

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ポイント             
・ 両端が節

・ 弦を伝わる波の速さ\(\displaystyle V=\sqrt{\frac{S}{\rho} } \)  
    \(S\): 弦の張力[N]、\(\rho \): 弦の線密度[\(\text{kg}\)/m]
・ 番号\(n\)のときの波の数は\(\displaystyle \frac{1}{2} ×n \)  

 弦に波を起こすときには、しばしば弦の両端が固定される。生じた波は左端でも右端でも反射されるから、2-07-1の入射波と反射波が重なり合って「形の等しい2つの波が\(+V,-V\)」の状況、つまり定常波が生じる。ただし両端は固定された固定端だから、両端ともに節。すると図1のような波形は許されても、図2のように右端が腹となる波形は許されない(なお、青線から黄色の線は最短で\(\frac{1}{2} \)周期経っている)。

 定常波というジャンルの内、限られた波形だけが許される場合を特に固有振動という。ここでは弦の固有振動を扱う。次の2-12-1では気柱の固有振動を扱う。なお、弦の固有振動は空気中に音波を生じさせる。弦は弦楽器の原型だ。

 さて、固有振動では波の基本量\(V,\lambda, f\)を押さえることが大切。
 まず、弦を伝わる波の速さ\(\displaystyle V=\sqrt{\frac{S}{\rho} } \)の公式は覚えておこう(その証明は当面は不要)。\(S\)は弦の張力、\(\rho \)は弦の線密度。ふつう密度と言えば1m\(^3\)あたり何\(\text{kg} \)という単位体積あたりの質量を指すが、「線」密度とは単位長さあたりの質量、つまり1mあたり何\(\text{kg} \)という量で、ゆえに単位は[\(\text{kg/m} \)]。
 次に\(\lambda, f\)であるが、
1⃣ 初めに、弦の長さ\(l\)が一定の場合を考える。
 波長\(\lambda \)とは、サインカーブ1個を波1個と数えたときの「波1個分の長さ」のことだから、弦の中に含まれる波の数さえ分かれば、\(\lambda\)=波1個分の長さ=\(\displaystyle \frac{l}{波の数} \)と求まり、後は\(\displaystyle f=\frac{V}{\lambda } \)とすれば\(f\)も求まる。
 図3の形を「腹1個」と呼ぼう。これは\(\frac{1}{2} \)波長分だから、波の数\(\frac{1}{2} \)に相当。

図3

 この腹の数1,2,3,\(\cdots \)に対応して\(n\)=1,2,3, \(\cdots \)と番号を付け、それぞれ基本振動2倍振動3倍振動、・・・ と呼ぶ(図4)。
 すると、\(n\)倍振動 ―― 腹\(n\)個 ―― 波の数\(\displaystyle \frac{1}{2} ×n \) 
―― \(\displaystyle \lambda =\frac{l}{波の数} \) \(\displaystyle=\frac{l}{\frac{1}{2} ×n} = \frac{2l}{n} \)、 \(\displaystyle f=\frac{V}{\lambda} =\frac{n}{2l} \sqrt{\frac{S}{\rho} } \)      (*)

図4

 この\(\lambda ,f \)の公式は覚える必要はない。波の数が\(\frac{1}{2} ×n \)であることさえ理解できていれば、(*)の考え方によりあっという間に求まるから。

2⃣ 次に、\(\lambda \)が一定の場合を考えよう。
 \(\lambda \)一定の状況が生じるのは、例えば一定の振動数\(f\)のおんさの金属部分に弦の端をつなぐ場合だ(図5)。金属部分が1sあたり\(f\)回振動すると、それにつながれた弦も1sあたり\(f\)回振動するから、弦の振動数はおんさと同じ\(f\)に一定に保たれる。さらに弦の張力\(S\)、線密度\(\rho \)を一定に保てば、波の速さ\( V=\sqrt{\frac{S}{\rho} } \)も一定。ゆえに\(\lambda =\frac{V}{f} \)も一定となる、そういう状況。\( \lambda \)一定だから、弦の長さ\(l\)を大きくしていくと(図5の上から下に行くと)、順に基本振動、2倍振動、3倍振動、・・・ が現れる。この場合も(*)の考え方は成り立つ。

図5

3⃣ 最後に、\(l,\lambda ,f,V \)様々なものを実験ごとに変えていく場合がある。このときも、やはり(*)の考え方は成り立つ。(*)は万能だ。

Posted by AKJ