6-10-2: 質量とエネルギーの等価性 <例題>
練習題を何題かやってみましょう!
準備として、統一原子質量単位[ \(\text{u}\) ]について説明しておく。定義により
\(1\text{u}=^{12}_{\; 6}\text{C} \) 1個の質量の\(\displaystyle \frac{1}{12}=1.66×10^{-27}\text{kg} \)
である。\(^{12}_{\; 6}\text{C} \) 1個の質量は\(12\text{u} \)であることから分かる通り、[\(\text{u}\)]単位で表した質量の数値部分は元素の原子量に近い値となる。
例題
陽子\(p\)、中性子\(n\)、電子\(e^-\)の質量をそれぞれ\(m_p\)、\(m_n\)、\(m_e\)、光速を\(c\)とし、これらを以下の答に用いてよい。
問1 \(^{14}_{\; 7}\text{N} \)、\(^{4}_{2}\text{He} \)、\(^{17}_{\; 8}\text{O}\)の質量をそれぞれ\(M_1\)、\(M_2\)、\(M_3\)とする。
核反応 \(^{14}_{\; 7}\text{N}+ ^{4}_{2}\text{He}→\; \) \(^{17}_{\; 8}\text{O}+p +E_0\)
において解放されるエネルギー\(E_0\)を求めよ。
問2 重水素原子核\(^{2}_{1}\text{H} \)の結合エネルギーを\(2.2\text{MeV} \)として、重水素原子核の質量\(m\)を、有効数字4桁の[\(\text{kg}\)]単位で答えよ。\(m_p=1.0073\text{u} \)、\(m_n=1.0078\text{u} \)、\(1\text{u}=1.661×10^{-27}\text{kg} \)、\(c=3.0×10^8\text{m/s} \)、電気素量\(e=1.6×10^{-19} \text{C} \)とする。電卓などを用いてよい。
問3 核反応 \(^{2}_{1}\text{H}+ ^{3}_{1}\text{H} →\;^{4}_{2}\text{He} +^{1}_{0}\text{n} +E\)
において解放されるエネルギー\(E\)を、以下の数値を利用して[\(\text{MeV} \)]単位で答えよ。
\(^{2}_{1}\text{H}\)、\(^{3}_{1}\text{H}\)、\(^{4}_{2}\text{He}\)の結合エネルギーがそれぞれ\(B_1=2.2\text{MeV} \)、\(B_2=8.5\text{MeV} \)、\(B_3=28.3\text{MeV} \)
問4 β崩壊 \(^{60}_{27}\text{Co}→\; \) \(e^{-} \) \(+\; ^{60}_{28}\text{Ni} +x\)\(+E_{\beta}\) において解放されるエネルギー\(E_{\beta}\)を、以下の結合エネルギーなどを用いて表せ。ただし、崩壊式中の\(x\)の質量は無視してよい。
\(^{60}_{27}\text{Co}\) の結合エネルギー\(b_1\)、\(^{60}_{28}\text{Ni} \)の結合エネルギー\(b_2\)
解答・解説
問1 6-10-1の\(E=mc^2\)を用いて、与えれらた核反応でのエネルギー保存則は
\(M_1 c^2+M _2 c^2=M_3 c^2+m_p c^2+E_0\)
∴ \(E_0=\) 答 \((M_1+M _2 -M_3-m_p)c^2\)
問2 6-10-1でやった通り、\(^{2}_{1}\text{H} \)の \(mc^2=m_p c^2+m_n c^2-B\)
∴ \(\displaystyle m=(m_p+m_n)-\frac{B}{c^2} \)
6-01-2の\(1\text{eV}=1.6×10^{-19}\text{J} \)に注意して
\(\displaystyle m=(1.0073+1.0078)\text{u}×1.661×10^{-27}\text{kg/u}-\frac{2.2×10^6\text{eV}×1.6×10^{-19}\text{J/eV}}{(3.0×10^8\text{m/s})^2} \)
= 答 \(3.343×10^{-27}\text{kg} \)
問3 エネルギー保存則は
\(M(^{2}\text{H})c^2+ M(^{3}\text{H})c^2=M(^{4}\text{He})c^2+m_n c^2+E\)
それぞれの\(M(\cdots)c^2\)を書き換えると
\((m_p c^2+m_n c^2-B_1)+(m_p c^2+2m_n c^2-B_2)=(2m_p c^2+2m_n c^2-B_3)+m_n c^2+E\)
(1) \(m_p c^2\)の項に注目すると、左辺も右辺も\(2m_p c^2\)で打ち消し合っている。これは電荷保存則(電気量保存則)の表れである。
(2) \(m_n c^2\)の項に注目すると、左辺も右辺も\(3m_n c^2\)で打ち消し合っている。(1)と(2)を組合わせたものは核子数保存則の表れである。
よって \(E=B_3-B_1-B_2\) (☆)
\(=28.3-2.2-8.5 \, \text{MeV} = \) 答 \(17.6\text{MeV} \)
[ (☆)から分かる通り、核反応において解放されるエネルギーは、反応前から反応後への結合エネルギーの増加分に等しい ]
問4 問3と同様にして、エネルギー保存則は
\(27m_p c^2+33m_n c^2-b_1=m_e c^2+(28m_p c^2+32m_n c^2-b_2)+E_{\beta} \)
∴ \(E_{\beta}=\) 答 \(b_2-b_1+(m_n-m_p-m_e)c^2 \)
[ β崩壊では、中性子\(n\)が陽子\(p\)と電子\(e^-\)に変換するから、答には(☆)のような結合エネルギーの増加分\(b_2-b_1\)だけではなく、\((m_n-m_p-m_e)c^2 \)も入ってくる ]