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6-01-1: 原子物理の準備

原子物理は20世紀初めのノーベル物理学賞の織り成す物語です                      

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ポイント             
・ プランク定数\(h\)=6.6×10\(^{-34}\) J\(\cdot\)s 光速度\(c\)=3.0×10\(^8\) m/s
・ 光の波長\(\lambda\)、振動数\(\nu\)として \(c=\lambda \nu\)
・ アインシュタインの光量子仮説:光とは光子という粒子の集団である
  1光子のエネルギー\(E=h\nu\)運動量\(\displaystyle p=\frac{h}{\lambda} \)
・ 原子物理に関わる電磁波は、波長の長い方から可視光線紫外線X線\(\gamma\)線  

 原子物理の3大テーマは「光電効果」「ボーアモデル」「原子核の分野」。19世紀末の当時不可解と思われていた様々な現象に端を発し、20世紀初めそれらが解決を見たり、さらには新たな地平が切り拓かれていく。20世紀初めの数々のノーベル物理学賞で紡がれる物語が原子物理だ。
 原子物理では、プランク定数\(h\)および光速度\(c\)という自然界の2つの基本的な定数が頻出する。
 有効数字2桁で\(h\)=6.6×10\(^{-34}\) J\(\cdot\)s
        \(c\)=3.0×10\(^8\) m/s  は単位込みで覚えておくのがよい。
 まずは準備として、アインシュタインの提唱した光量子仮説から。
 アインシュタインによれば「光とは光子という粒子の集団」である。発表当時は光量子「仮説」だったが、これは現代物理学の最先端においても全く正しい。 [ ただし、ここでいう「粒子」とは量子力学(大学の課程)の用語としての粒子であると一言添えておき、これ以上深入りしない。] 例えば電灯からは大まかに1sあたり10\(^{15}\)個(!)もの光子が降り注いでいる。
 光の波長\(\lambda\)、振動数\(\nu\)(ギリシャ文字のニュー)として [ 原子物理では振動数に\(f\)という文字はあまり用いない ]
 1光子のエネルギーは \(E=h\nu\) 、運動量は \(\displaystyle p=\frac{h}{\lambda}\)    (☆)
 理由はなぜか。宇宙においては光子はそのようにふるまう、というのが現代物理学の理解だ。そもそも、光子や電子などは素粒子と呼ばれ、光子も電子もそれ以上2つや3つに分割することができない自然界の最小構成要素としての役割を担っている。例えば電子は原子の構成要素をなし、その原子が我々の身体を形作っている。最先端の実験事実によれば、素粒子の大きさはざっと\(\displaystyle\)10\(^{-19}\)m(!)よりも小さい。そういった自然界の根底をなす素粒子の性質は受け入れるしかない。つまり、(☆)は光子の性質として覚えよう。
 ここで、波の速さ\(V=\lambda f\)に対応して、光速度\(c=\lambda \nu\)だから、(☆)は
 \(\displaystyle E=h\frac{c}{\lambda}\)\(\displaystyle =\frac{h}{\lambda}c\)\(=pc \)\(\displaystyle p=h\frac{\nu}{c}\)\(\displaystyle =\frac{h\nu}{c}\)\(\displaystyle =\frac{E}{c}\) 
のようにも書き換えられる。この書き換えもすんなりできるように練習しておこう。

 ところで「光」と述べたのは、総称名「電磁波」と呼ばれているもので、波長により個別の名称 ー 長波、中波、短波、マイクロ波、赤外線など ー が与えられている。原子物理に関わる電磁波は、波長の長い方から順に
 可視光線 \(\lambda\)=10\(^{-7}\)m程度
 紫外線
 X線   \(\lambda\)=10\(^{-10}\)mを中心として、その10倍(ときには100倍)から10分の1(ときには100分の1)程度まで
 \(\gamma\)線
である。例えば紫外線とX線の間に\(\lambda\)=○○mといった明確な境界値があるわけではなく、ここら辺は研究者の研究分野で名称を使い分けているといったこともあるので、\(\lambda\)の正確な値にこだわる必要はない。
 なお\(\gamma\)線の\(\lambda\)が最も小さいということは、\(\nu=\frac{c}{\lambda} \)より\(\gamma\)線の\(\nu\)が最も大きく、エネルギー\(E=h\nu\)が最も強力。よって、原発事故という悲劇で放出される\(\gamma\)線の光子集団は、細胞レベルで人体に悪影響を及ぼし、それこそ致死的である。

Posted by AKJ