10-01-2: 第1法則「F=0ならa=0」は第2法則ma=Fに含まれる?(続き)
さあ、いよいよ話のクライマックスです!
運動の第1法則が第1であることの意義
大地に静止した座標系で運動方程式を立てて理論と観測結果の比較を行うと、非常に精度の良い一致が見られることから、大地に静止した座標系を慣性系(慣性力を入れずに運動方程式の成り立つ座標系、すなわち加速度運動していない座標系)と言って経験的に問題はない。
しかし、地球は自転運動・公転運動をしているのであるから、大地が(たとえその加速度が無視できるくらいに小さいにせよ、)全く加速度運動していないと言うことには概念的に無理がある。
ここで宇宙全体に目を転じると、地球の周りには質量の大きい太陽や木星があり、太陽系の外には無数の恒星や、恒星の集団としての銀河・銀河群・銀河団・超銀河団が存在する。これら全てがお互いがお互いを万有引力で引き合いながら運動している。してみると、宇宙の中に加速度運動していない座標系を1つこれだと特定することは、実験的にも理論的にも不可能と言わざるを得ない。加速度運動していない座標系(慣性系)の存在を証明することは不可能である。 ―― (1)
さて、10-01-1で見た通り、慣性の法則「物体に力が働かないと、物体は等速直線運動を続ける」は加速度運動していない座標系(慣性系)では成り立つ。 ―― (2) 加速度座標系では成り立たない。
以上(1)(2)を考え合わせると次のことが分かる。
運動の第1法則は、慣性の法則「物体に力が働かないと、物体は等速直線運動を続ける」と単純に言及しているだけの法則ではない(それはそもそも、加速度座標系では成り立たないのだから)。
そこで、第1法則の深い意味が浮き彫りになってくる。
運動の第1法則は、慣性の法則「物体に力が働かないと、物体は等速直線運動を続ける」の成り立つ座標系が我々の宇宙には必ず存在すると、証明できない前提を踏まえて主張する法則である。
つまり、「慣性の法則の成り立つ座標系(慣性系)の存在を証明抜きに保証する」と高らかに宣言する所のまさに第1法則なのだ。
そして第1法則の後に続くのは、
運動の第2法則: 慣性系では、運動方程式が成立する(非慣性系では、慣性力(見かけの力)を入れないと運動方程式が成り立たなかった)
運動の第3法則: 慣性系では、作用反作用の法則が成立する(10-01-1で見た通り、非慣性系で登場する慣性力は作用反作用の法則を満たさなかった)
以下『 』はズバリ誤りである。『 第2法則\(m\vec{a}=\vec{F} \)で\(\vec{F}=\vec{0} \)の場合は \(\vec{a} =\vec{0} \)となるから、第2法則\(m\vec{a}=\vec{F} \)から第1「\(\vec{F}=\vec{0} \)なら\(\vec{a} =\vec{0} \) (力が働かないと物体は等速) 」が証明される 』―― くれぐれも、「\(\vec{F}=\vec{0} \)なら\( \vec{a}=\vec{0} \)」(慣性の法則)が成り立つのは慣性系のみで((2)の通り)、その存在は証明できないのである((1)の通り)。
正しくは、まず第1(慣性系の存在保証)があって、次に慣性系でのみ成り立つ第2・第3へと続くのがニュートンの運動の法則の理論的構成なのだ。
マチガイ
第2法則 \(m\vec{a}=\vec{F} \)
\(\Longrightarrow \) 第1法則 \(\vec{F}= \vec{0} \)なら\(\vec{a} =\vec{0} \)
正解は
第1 \(\vec{F}= \vec{0} \) なら\( \vec{a} =\vec{0} \) の成り立つ座標系が在する(証明不可)。
その座標系では第2、第3が成立