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1-37-1: 遠心力

遠心力は慣性力の一種です。しっかり押さえましょう                                

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ポイント             
・ 遠心力:回転座標系で運動方程式を成り立たせるために必要となる慣性力
 向き:回転軸と垂直な方向、軸から遠ざかる向き
 大きさ:\(mR\omega^2\)(\(R\):物体と回転軸との距離、
          \(\omega\):静止座標系に対する回転座標系の角速度)

 1-35-1と同様に、静止座標系・回転座標系をそれぞれ静止系・回転系と略す。遠心力の説明の題材として図1を選ぼう。鉛直方向の棒を回転軸とし、水平方向の棒に取り付けた小球(以後球と呼ぶ)を、外力(例えば手の力)を加えながら一定の角速度\(\omega\)で水平面内を回転させる。これを静止系(床上に静止している観測者)から見たのが図2。棒からの張力\(T\)を受けて小球に向心加速度\(R\omega^2\)が生じている。円運動の方程式
 \(mR\omega^2=T\)          (1)

図1

 ここで、図3のように回転系から球を眺めよう。つまり、回転軸上で球と同じ高さの目線を保ちながら角速度\(\omega\)で回転する観測者(人)を想定する。球が時間\(\Delta t\)の間に\(\omega\Delta t \)回ると、人の目線も等しく\(\omega\Delta t \)回るということは、人から見て球は同じ位置にとどまり続けて見えるということ。ゆえにつり合いの式が成り立つ。ただし、単純に\(0=T\) では静止系から見た運動方程式(1)、すなわち正しい方程式と食い違ってしまう。そこで図3のように赤い矢印\(mR\omega^2\)を見かけの力(慣性力)として書き足して、つり合いの式を書けば
 \(0=T-mR\omega^2\)        (2)

 (2)は(1)と同値だから正しい方程式になっている。この\(mR\omega^2\)遠心力と言い、ポイントにある通り、回転系における慣性力の一種である。遠心力の効果は、例えば遊園地のコーヒーカップ(乗り物)で自分の背中がカップの壁に押し付けられることから実感できる。そう、カップの回転軸から遠ざかる向きに我々は遠心力を受けて、背中が壁に圧迫される。
 ここで、物理用語をしっかり整理しておきたい。(2)の右辺の\(mR\omega^2\)は遠心力であるが、(1)の左辺の\(mR\omega^2\)は遠心力ではない、と言うとドキッとする人もいるのではないか。それをしっかり押さえよう。運動方程式は因果法則「力という原因によって、結果的に加速度が生じる」だった。であるなら、回転系の方程式(2)の右辺は、遠心「力」\(mR\omega^2\)という原因と張「力」\(T\)という原因がプラスマイナス打ち消し合って、結果的に加速度を生じずつり合っているという意味になる。一方、静止系ではそもそも遠心力(慣性力の一種)のような見かけの力は存在しない。その方程式(1)の右辺は張「力」\(T\)という原因で、それによって結果的に向心加速度\(R\omega^2\)が生じるから床から見て球は円運動するという意味である。つまり静止系の(1)の左辺は、遠心「力」という原因でも何でもなく、あくまでも質量\(m\)×向心加速度(結果)\(R\omega^2\)に過ぎない。
 最後に図4のような場合の注意点を1つ。小球が半径\(r\)の円リングに通されて、その円リングが鉛直軸の周りに角速度\(\omega\)で回転するような場合。今までの説明から分かる通り、回転軸の観測者からの距離\(R\)(\(=r\sin\theta\))を用いて、遠心力は回転軸と垂直な方向(水平方向)に\(mR\omega^2\)となる(言い換えると、回転軸に物体から垂線を下した位置に観測者を想定する)。うっかり半径\(r\)に目が行き遠心力\(mr\omega^2\)としたり、あるいは半径\(r\)の延長線上に遠心力の矢印を書いたりしないこと。

図4

Posted by AKJ