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1-25-1: 斜面上の単振動 <例題>

この例題1つで単振動のここまで(1-22-1,1-23-1,1-24-1,1-24-2)の総まとめができます。少し長い単元ですが、頑張りましょう                                

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例題 

 図aのように水平面に固定された傾角\(\theta\)のなめらかな斜面がある。ばね定数\(k\)の軽いばねの一端を斜面上の壁に固定し、他端に質量\(m\)の物体をつなぐ。物体はつねに斜面上にあるものとし、以下で位置とはばねと物体のつなぎ目の位置を指す。図aでは、ばねの自然長の位置Pからばねがある距離だけ縮んだ位置Qに、外力を加えることなく物体が静止している。重力加速度の大きさを\(g\)とする。
問1 PQ間の距離を求めよ。

 次に、図bのように位置RをQR間の距離がPQ間の距離の2倍と等しくなるように取る。物体を位置Rに手で支えながら移し、次いで静かに手を離すと物体は単振動をした。位置Qから斜面に平行に上向きに取った変位を\(x\)とする。
問2 \(x\)だけ変位した位置で物体に加わる合力を求めよ。
問3 初めて位置Qに達したときの物体の速度を求めよ。
問4 物体が位置Rから初めて位置Qに達するまでの時間を求めよ。
問5 初めて位置Pに達したときの物体の速度を求めよ。
問6 物体が位置Rから初めて位置Pに達するまでの時間を求めよ。

解答・解説

 単振動のありとあらゆる問題を、1-24-1のポイントの手順に従って考えていくことが単振動攻略の早道だ。

 まず軸と力の図示。\(x\)軸に正の向き、原点、自然長の位置、つり合い点\(x_c\)を添え、さらに\(x_c\)及び任意の位置\(x\)に物体を書く。いまつり合い点はQで、Qを原点に取る(\(x_c=0\))(図1。座標には□印の囲みを入れてある)。Pの下に〇印で自とあるのは自然長の位置という意味。自然長からのちぢみを\(d\)とおけば、縮んだ所が原点のQだから、Pの座標は\(d\)になる。次に任意の\(x\)であるが、のび・ちぢみの一方だけ調べればよく(1-22-1)、いまちぢみ側に\(x\)(<0)を取った(図1)。

図1

問1 つり合い点Qで力を図示する(図2)。まず重力\(mg\)を下向きに書いて、次に物体にふれているものを探す。物体に斜面がふれているから、斜面から働く垂直抗力\(N\)を斜面に垂直に書く。物体にばねがふれているから、ばねから働く弾性力を書く。弾性力の向きは縮んだばねが自然長に戻ろうとして物体を押す(斜面に沿って上)向き。弾性力の大きさは\(k\)×ちぢみ\(=kd\) 。
 次に\(ma=F\) つり合いの式を\(x\)、\(y\)方向について立てるために、\(mg\)を分解。\(x\)方向に\(mg\sin\theta\)、\(y\)方向に\(mg\cos\theta\)(図2)。
 つり合い:(\(x\)成分) \(0=kd-mg\sin\theta\)    (1)
 ∴ \(d=\overline{\text{PQ}}=\)  \(\displaystyle \frac{mg}{k}\sin\theta \)
 ・ なお、問では聞かれていないが、つり合い:(\(y\)成分) \(0=N-mg\cos\theta\)  

図2

問2 再びまず軸と力に戻って、任意の\(x\)で力を図示する。今度は\(x\)方向の力だけ書いた(図3)。ばねのちぢみとは自然長からのずれ\(|d-x|\)で、斜面に沿って上向きを正に取ったということは、上側の座標\(d\)の方が下側の座標\(x\)より大きい。ゆえにちぢみは大きい方から小さい方を引いた\(d-x\)で、弾性力の大きさは\(k(d-x)\)。
 次に\(ma=F\) [ 図3を見ながら ]
 \(ma=k(d-x)-mg\sin\theta=-kx+kd-mg\sin\theta\) [ (1)を用いて ]
   \(=-kx\)                 (2)         
 求める合力とは\(ma=F\)の\(F\)だから  \(-kx\)

図3

 1-24-1のポイントに従って続きを書くと、(2)の両辺を\(m\)で割って 
        \(\displaystyle (a=)\frac{d^2x}{dt^2} =-\frac{k}{m} (x-0) \)
 これを単振動の方程式 \(\displaystyle \frac{d^2x}{dt^2} =-\omega^2 (x-x_c) \) と比べて
  \(\omega\) \(\displaystyle =\sqrt{\frac{k}{m}} \) 、 \(x_c\) \(=0\) を読み取る。\(\,\)       (3)
 (原点をつり合い点Qに取ったのだから、\(x_c=0\)になるのは当然)
問3 運動\(v,x\)を調べる 初期条件\(v_0,x_0\)に注意する。いま初期位置R(図4)にて\(v_0=0\)、\(x_0=-2d\)。すると1-24-2で扱った「つり合い点から\(-2d\)ずらして静かに離す」パターンになるから、
 \(x=-2d\cos\omega t\)               (4)
であると分かる(グラフは図5)。ここまでで、1-24-1のポイントの手続きは完了
 さて、求めるQでの速度をエネルギー保存則で計算することもできる。しかしQはつり合い点だから、1-24-2の公式
 つり合い点にて\(v_{\text{max}} =A\omega\)           (5)
が便利。ここで\(A\)は振幅で、図5より\(A=2d\)。よって(3)の\(\omega\)を用いて
 \(v_{\text{max}} =\)  \(\displaystyle 2d\sqrt{\frac{k}{m}} \)

図4
図5

問4 1-23-1の通り、周期\(\displaystyle T=\frac{2\pi}{\omega}=2\pi \sqrt{\frac{m}{k}} \: \)  (6)  [ (3)を用いた ]
 図5よりQまでの時間は \(\displaystyle \frac{T}{4}= \)  \(\displaystyle \frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{m}{k}} \)
・ 単振動でよく聞かれる時間としては、
 振動の 端~中心\(\displaystyle =\frac{1}{4} \)周期 [ 図5の赤字を見よ ]
    一端~他端\(\displaystyle =\frac{1}{2} \)周期 
がある。これらは、即座に答えられるようにグラフのイメージを頭に焼き付けておこう。
問5 Pは自然長の位置でつり合い点ではないから、公式\(v_{\text{max}} =A\omega\)は使えない。その代わりに力学的エネルギー保存則:
  運動エネルギー\(\displaystyle \frac{m}{2}v^2\)+重力による位置エネルギー\(mg\)×(高さ)
  +弾性エネルギー\(\displaystyle \frac{k}{2}\)×(のび・ちぢみ)\(^2\)=一定  を用いるのが手早い。
 図6の高さやちぢみを見ながら  
        あと             まえ
 \(\displaystyle \frac{m}{2}v’^2+mg×3d\sin\theta+ \frac{k}{2}0^2 = \frac{m}{2}0^2+mg0+ \frac{k}{2}(3d)^2 \)
  左辺第2項\(=mg\sin\theta×3d=kd×3d \) [ (1)を用いた ] と書き換えると、
 \(\displaystyle \frac{m}{2}v’^2=\frac{k}{2}(3d)^2 -3kd^2=\frac{3}{2}kd^2 \)  両辺\(\displaystyle \frac{2}{m} \)倍して \(\displaystyle v’^2=\frac{3k}{m}d^2 \)
 よって \(v’=\)  \(\displaystyle d\sqrt{\frac{3k}{m} } \)
問6 時間は\(x\)と\(t\)の関係(4)で求める。Pまでの時間を\(t’\)とすると、Pでの\(x=d\)だから、(4)より
 \(x=d=-2d\cos\omega t’\)  ∴ \(\displaystyle \cos\omega t’=-\frac{1}{2} \)  ∴ \(\displaystyle \omega t’=\frac{2\pi}{3},\frac{4\pi}{3},\cdots \)
 問題文に「初めてPに達する時間」とあるから、時間\(t’\)の最小値を求めればよい。
 ∴ \(\displaystyle \omega t’=\frac{2\pi}{3} \)  ∴ \(\displaystyle t’=\frac{2\pi}{3}\frac{1}{\omega} \) [ (3)を用いて ]  \(\displaystyle \frac{2\pi}{3}\sqrt{\frac{m}{k}} \)

図6
図7

・ 結局 \(\displaystyle t’=\frac{2\pi}{3}\frac{1}{\omega}=\frac{1}{3}\frac{2\pi}{\omega}=\frac{1}{3}T \) である(図7)。
  グラフが仮に直線(図7黄色の点線)だったならば、求める時間は \(\displaystyle \frac{3}{8}T\)となる。ただし、単振動のグラフは曲線(三角関数)だから、直線的なイメージは誤りである。
・ 単振動で時間を求めさせるときは、\(\sin\omega t\)あるいは\(\cos\omega t\) が \(\displaystyle \frac{1}{2},\frac{\sqrt{2}}{2},\frac{\sqrt{3}}{2},\cdots\) のような「キリのいい数」になる場合しか出題されない。
・ 時間を求めさせる問題のほとんど全てで、\(x\)と\(t\)の関係は1-24-2の通り\(\pm \sin\)型や\(\pm \cos\)型となる。ただし、ごくまれにそうならない(\(\sin (\omega t+\phi)\)のようになる)出題がある。その場合の対策はここでは深入りしない。

Posted by AKJ