1-09-2: 摩擦力 <例題1>
3種類の摩擦 ―― 静止摩擦、最大摩擦、動摩擦 ―― を使いこなして運動方程式を立てられるようにしましょう! → <例題2>は1-09-3へ
例題1
水平な床に質量\(m\)の物体が置かれている。図のように、物体に棒を取り付け、棒と床のなす角度を\(\theta\)として、棒の方向に大きさ\(F\)の力を加えた。ただし、棒の質量は無視できるものとし、物体と床の間の静止摩擦係数を\(\mu\)、動摩擦係数を\({\mu}’ \)、重力加速度の大きさを\(g\)とする。
問1 \(F\)の大きさを\(F_1\)にしたところ物体は静止したままだった。このとき物体に床から働く摩擦力の大きさはいくらか。正しいものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
① \(\mu mg\) ② \(\mu (mg+F_1\cos\theta) \) ③ \(\mu (mg+F_1\sin\theta) \)
④ \(F_1\cos\theta \) ⑤ \(F_1\sin\theta \)
問2 次に、\(F\)の大きさを徐々に大きくしていったところ、その大きさが\(F_2\)を越えたとき物体が動き始めた。\(F_2\)はいくらか。正しいものを、次の①~⑧のうちから一つ選べ。
① \(\displaystyle \frac{\mu mg}{\cos\theta -\mu \sin\theta} \) ② \(\displaystyle \frac{\mu mg}{\cos\theta} \) ③ \(\displaystyle \frac{\mu mg}
{\sin\theta -\mu \cos\theta} \)
④ \(\displaystyle \frac{\mu mg}{\sin\theta} \) ⑤ \(\displaystyle \frac{mg}{\cos\theta -\mu \sin\theta} \) ⑥ \(\displaystyle \frac{mg}{\cos\theta} \)
⑦ \(\displaystyle \frac{mg}{\sin\theta -\mu \cos\theta} \) ⑧ \(\displaystyle \frac{mg}{\sin\theta} \)
解答・解説
1-08-1: 力学攻略の基本 の流れに従って行く。
まず軸と力を図示 物体は右向きに直線運動しようとするから、右向きに\(x\)軸、上向きに\(y\)軸。
力は\(mg\)、ふれている棒から\(F\)、床面から「面に垂直な垂直抗力\(N\)と面に平行な摩擦力\(R\)」。
次に\(ma=F\)
正の向きに、\(a_x=0\)、\(a_y=0\)と図示。\(x\)、\(y\)軸に対して斜めの\(F\)を分解。
運動方程式は各方向ごとに別々に立てる。
\(x\)方向: \(m0=F\cos\theta -R \) (1)
\(y\)方向: \(m0=N-F\sin\theta -mg \) (2)
問1 \(F=F_1\)だから、(1)より\(R=F_1\cos\theta \) 答 ④
(まだ余裕ですべっていない状況だから、すべり出す直前の公式\(R=\mu N\)(1-09-1)を用いてはいけない。)
問2 \(F=F_2\)のときはすべり出す直前だから、公式\(R=\mu N \) (3)
を用いてよい。
(1)より \(R=F_2\sin\theta \)
(2)より \(N=mg+F_2\sin\theta \) [ \(N=mg\)とは限らない ]
これらを(3)に代入 \(F_2\cos\theta =\mu(mg+F_2\sin\theta) \)
∴ \(F_2(\cos\theta -\mu\sin\theta)=\mu mg \) ∴ \(\displaystyle F_2=\frac{\mu mg}{\cos\theta -\mu\sin\theta} \)
答 ①