2-07-3: 定常波の波の式
定常波の式は入試の頻出問題です! → 関連事項は2-07-1へ
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2-07-1の通り、定常波とは形 (振幅・波長)の等しい2つの波が速度\(+V,-V\)で重なり合うときの合成波。この単元ではこれを波の式を用いて調べていく。
まず\(\pm x\)方向に進む波の式を\(y_{\pm}(x,t) \)とする(複合同順とする、以下同様)。2-03-2の通り
\(\displaystyle y_{\pm}(x,t) =A\sin2\pi \left( \frac{t}{T} \mp \frac{x}{\lambda} \right) \; \) (1)
とおく。ただし、簡単のため\(\phi=0\)とした。波の「式」とは言うものの、それが表しているものは波の「高さ」\(y_{\pm}\)である。一方、定常波の(波の)式を\(Y(x,t)\)とする。定常波とは(\(+x\))方向に進む波と(\(-x\))方向に進む波の合成波だから、2-05-1の重ね合わせの原理により、
定常波の式(高さ)\(Y(x,t)=(+x)\)方向に進む波の式(高さ)\(y_+(x,t) \)
\(+\) \( (-x)\)方向に進む波の式(高さ)\(y_-(x,t) \)
[ (1)を代入 ]
\(\displaystyle =A \left[ \sin2\pi \left( \frac{t}{T} -\frac{x}{\lambda} \right) +\sin2\pi \left( \frac{t}{T} + \frac{x}{\lambda} \right) \right] \)
\(\sin\)の中身を \(\displaystyle \alpha=2\pi \left( \frac{t}{T} -\frac{x}{\lambda} \right) \)、\(\displaystyle \beta=2\pi \left( \frac{t}{T} +\frac{x}{\lambda} \right) \) (2)
とおけば、
\(\displaystyle Y(x,t)=A(\sin\alpha+\sin\beta) \) (3)
ここで、三角関数の和を積に直す公式
\(\displaystyle \sin\alpha+\sin\beta=2\sin \frac{\alpha+\beta}{2}\cos \frac{\alpha-\beta}{2} \) (4)
を用いる。(2)より
\(\displaystyle \frac{\alpha+\beta}{2}=2\pi \left( \frac{t}{T}+\frac{t}{T} \right)/2 =2\pi \frac{t}{T} \) 及び
\(\displaystyle \frac{\alpha-\beta}{2}=2\pi \left( -\frac{x}{\lambda}-\frac{x}{\lambda} \right)/2=-2\pi \frac{x}{\lambda} \) であるから、(4)は
\(\displaystyle \sin\alpha+\sin\beta=2\sin\left( 2\pi \frac{t}{T} \right) \cos\left( -2\pi \frac{x}{\lambda} \right) \)
[ \(\cos(-\theta)=\cos\theta \)より ] \(\displaystyle =2\sin\left( 2\pi \frac{t}{T} \right) \cos\left( 2\pi \frac{x}{\lambda} \right) \)
これを(3)に代入し、さらにこれからの説明のために\(\sin\)と\(\cos\)の順序を逆にしておくと
定常波の式 \(\displaystyle Y(x,t)=2A\cos\left(2\pi \frac{x}{\lambda} \right)×\sin\left( 2\pi \frac{t}{T} \right) \) (5)
ここまでの計算が難しいと感じる人もいるかもしれないが、実は入試では頻出である。何度か計算練習を繰り返しておこう。
さて、(5)は2つの三角関数の積で表されているが、これは以下のように考えれば何と(!)グラフ化できる。いま(5)を
\(Y(x,t)=\)\(\displaystyle \left[ ①\: 2A\cos\left( 2\pi \frac{x}{\lambda} \right) \right] \) × \(\displaystyle \left[ ②\: \sin\left( 2\pi \frac{t}{T} \right) \right] \) (6)
のように表せば、①は\(x\)のみの関数、②は\(t\)のみの関数になっている(「変数分離形」と言ったりもする)。ここで(6)を
「定常波の高さ\(Y\)は(①の高さ)×(②の値)」 (☆)
のように読むことにする。以下1⃣2⃣ の順序で説明していこう。
1⃣ (①の高さ)は\(x\)の関数だから\(y\)-\(x\)グラフ(波形)として図示できる。
2⃣ (②の値)は\(\sin\)関数だから\(-1≦\)②\(≦1\)の値域を取る。
1⃣ (6)中の(①の高さ) \(\displaystyle y=2A\cos\left( 2\pi \frac{x}{\lambda} \right) \) のグラフは図1の赤線のようになる。\(\cos\)の中身の\(x\)に\(\lambda\)を代入すると\(\cos\)の中身が\(2\pi\)になり、\(2\pi\)はコサインカーブ1個分に対応するから、図1は\(\lambda\)が1波長分になっている\(y\)-\(x\)グラフである。図1にはその上下逆さまのグラフを青、高さが0のままのグラフを緑で図示しておいた。
2⃣ (6)中の(②の値)\(\displaystyle =\sin\left( 2\pi \frac{t}{T} \right) \)であるが、
\(t=0\)のときは (②の値)\(\displaystyle =\sin\left( 2\pi \frac{0}{T} \right)=0 \) 。 このとき(☆)より「定常波の高さ\(Y\)は(①の高さ(図1赤))×\(0=0\)」。ということは、\(t=0\)に写真を取ると、いたる所の\(x\)で高さが\(0\)の緑のグラフが写ることになる。
\(\displaystyle t=\frac{T}{4}\)のときは(②の値)\(\displaystyle =\sin\left( 2\pi \frac{\frac{T}{4}}{T} \right)=\sin\frac{\pi}{2}=1 \) 。「定常波の高さ\(Y\)は(①の高さ)×\(1=\)(①の高さ(図1赤))」。つまり\(\displaystyle t=\frac{T}{4}\)に写真を取ると、赤いグラフが写る。
\(\displaystyle t=\frac{T}{2}\)のときは (②の値)\(\displaystyle =\sin\left( 2\pi \frac{\frac{T}{2}}{T} \right)=0 \) 。\(\displaystyle t=\frac{T}{2}\)では高さが\(0\)の緑のグラフが写る。
\(\displaystyle t=\frac{3T}{4}\)のときは (②の値)\(\displaystyle =\sin\left( 2\pi \frac{\frac{3T}{4}}{T} \right)=\sin\frac{3\pi}{2}=-1 \) 。「定常波の高さ\(Y\)は(①の高さ)×\((-1)\)」。\(\displaystyle t=\frac{3T}{4}\)では赤の上下逆さまの青いグラフが写る。

あとは時間の順序 \(\displaystyle t=0,\frac{T}{4},\frac{T}{2},\frac{3T}{4},\cdots\) に従って、緑、赤、緑、青、… のように\(y\)-\(x\)グラフを動かせば、図2のような「動画」が見られる。これはまさに2-07-1で示した通りの定常波のふるまいである。

最後になるが、(6)定常波の式中の\(x\)のみの関数の項は
(①の高さ)\(\displaystyle =2A\cos\left( 2\pi \frac{x}{\lambda} \right) \) (7)
で、それは図1(または図2)の赤いグラフの高さだから、その絶対値は振幅を表す。(7)を見ての通り、振幅は位置\(x\)ごとに異なる。例えば、図2の腹の位置\(x=0\)と節の位置\(\displaystyle x=\frac{\lambda}{4}\)の中点\(\displaystyle x=\frac{\lambda}{8}\)では、
振幅\(=\)(7)の絶対値\(\displaystyle =2A\left| \cos\left( 2\pi \frac{\frac{\lambda}{8}}{\lambda} \right) \right| =2A\cos\frac{\pi}{4}=\sqrt{2}A \) である。