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1-17-3: 力学的エネルギーの保存と変化 <例題>

力学的エネルギーが保存する場合と変化する場合を、きっちりと区別しましょう             

例題 

 図1のように、斜面S0、S1と水平な床がなめらかにつながっている。斜面S0および床は摩擦のない面であり、斜面S1は粗い面である。床から高さ\(h\)の斜面S0上の点Pより、質量\(m\)の小物体Aを斜面に沿って下方に速さ\(v_0\)で打ち出した。ただし、斜面S1の水平面からの角度を\(\theta\)とし、重力加速度の大きさは\(g\)とする。また、斜面S1と小物体A の間の動摩擦係数を\(\mu '\)とする。

問1 床での小物体の速さはどれだけか。正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① \(v_0+\sqrt{gh} \)  ② \(\sqrt{{v_0}^2-gh} \)  ③ \(\sqrt{{v_0}^2-2gh} \)  
④ \(v_0+\sqrt{2gh} \)  ⑤ \(\sqrt{{v_0}^2+gh} \)  ⑥ \(\sqrt{{v_0}^2+2gh} \) 
問2 図2のように、小物体Aは斜面S1をのぼり、点Qにおいて速さが0になった。重力による位置エネルギーの基準を床に取ると、小物体の点Qでの位置エネルギーは床での運動エネルギーの何倍か。正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① \(\displaystyle \frac{1}{\sin\theta +\mu '\cos\theta} \)  ② \(\displaystyle \frac{1}{\cos\theta +\mu '\sin\theta} \)  
③ \(\displaystyle \frac{\cos\theta}{\sin\theta +\mu '\cos\theta} \)  ④ \(\displaystyle \frac{\cos\theta}{\cos\theta +\mu '\sin\theta} \)  
⑤ \(\displaystyle \frac{\sin\theta}{\sin\theta +\mu '\cos\theta} \)  ⑥ \(\displaystyle \frac{\sin\theta}{\cos\theta +\mu '\sin\theta} \)

解答・解説

 問1は、単に速さを求める、時間を求めなくてよい問題なので、1-17-1の通りエネルギーを用いる。問2は問題文からしてもちろんエネルギー。ところで、1-17-2でやった通り
1⃣ 重力・弾性力のみが仕事をするときには力学的エネルギー保存
2⃣ 重力・弾性力以外の力が仕事をすると力学的エネルギー変化
いずれの場合も重力・弾性力以外の力が働いているかどうか、しっかりと見極めないといけないから、やはり力は書き込む。力学の問題は、エネルギーで解こうが、運動方程式で解こうが、力は図示するのだ。

問1 重力・弾性力以外の力は\(N\)(図3)。力\(N\)は物体の移動方向(斜面平行方向や水平方向)と垂直だから、\(N\)の移動方向成分は0、つまり\(N\)の仕事=(\(N\)の移動方向成分)×(距離)=0。これが1-16-1で述べた「力の向きと移動の向きが垂直ならば仕事は0」である。重力・弾性力以外の力\(N\)が仕事しないから、
1⃣ 力学的エネルギー保存 を用いる。
 エネルギー保存は あと  =  まえ    と立てる(図3)。
       \(\displaystyle \frac{m}{2} v^2+mg0= \frac{m}{2} v_0^2 +mgh \)
 ∴ \(v^2={v_0}^2+2gh \)  ∴ \(v=\sqrt{{v_0}^2+2gh} \)      ⑥

図3

問2 重力・弾性力以外の力は\(N\)と動摩擦力\(R\)(図4)。
 問1と同様に\(N\)の仕事は0だが、動摩擦が仕事をする から、
2⃣ 力学的エネルギー変化=重力・弾性力以外の仕事=動摩擦の仕事\(W_R\) を用いる。
 力学的エネルギー変化は あと  -  まえ   と立てる(図4)。
        \(\displaystyle \left(\frac{m}{2}0^2+mgh’ \right) – \left(\frac{m}{2} v^2 +mg0 \right) =W_R \)  (1)

図4

 ということで、\(W_R\)を計算すればよい。
 \(W_R\)=(\(R\)の移動方向成分)×(距離)                (2) 
 ここで(距離)とは、\(R\)の加わっている間の距離のことだから、図5より (距離)=\(\displaystyle \frac{h’}{\sin\theta} \)。
 また、移動の向きが斜面平行上向きなのに対して、\(R\)の向きはすべり上がるのを妨げる斜面平行下向き(図4)だから、(\(R\)の移動方向成分)=\(-R\)。公式\(R=\mu ' N\)により、\(-R=-\mu ' N\)。

図5

 ところで斜面垂直方向の運動方程式は図4より \(0=N-mg\cos\theta \)  
 すなわち\(N=mg\cos\theta \) を代入して、結局(\(R\)の移動方向成分) =\(-\mu ' mg\cos\theta \)
  [ 選択肢中では使えない\(N\)を消去。選択肢を意識しながら、式変形しよう ]
 したがって(2)より \(\displaystyle W_R=-\mu ' mg\cos\theta ×\frac{h’}{\sin\theta} \)
 これを(1)に代入して  \(\displaystyle mgh’-\frac{m}{2} v^2 =-\mu ' mg \frac{\cos\theta}
{\sin\theta}h’ \)
 左辺に位置エネルギー\(mgh’\)、右辺に運動エネルギー\(\frac{m}{2} v^2\)と整理し、
  \(\displaystyle mgh’ \left( 1+\mu ' \frac{\cos\theta}{\sin\theta} \right) =\frac{m}{2} v^2 \)
  ∴ \( \displaystyle mgh’ \frac{\sin\theta +\mu ' \cos\theta}{\sin\theta} =\frac{m}{2} v^2 \)
  ∴ \( \displaystyle mgh’=\frac{\sin\theta}{\sin\theta +\mu ' \cos\theta} ×\frac{m}{2} v^2
\)      ⑤

Posted by AKJ