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5-09-1: いろいろな状態変化のモル比熱

定圧モル比熱、定積モル比熱、プラスアルファの内容も扱います。                                  

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ポイント             
・ 定圧モル比熱\(C_P\)と定積モル比熱\(C_V\)の間に
  \(C_P=C_V+R\)(\(R\)は気体定数)の関係が成り立つ
・ 単原子分子気体の\(\displaystyle C_V=\frac{3}{2}R \)\(\displaystyle C_P=\frac{5}{2}R \)

 以下ではモル数\(n\)一定とする。まずは定圧変化におけるモル比熱\(C\)の定圧モル比熱\(C_P\)を考える。
 熱力学第1法則\(Q=\Delta U+W\)  (*)  を定圧変化に当てはめてみよう。
 左辺の\(Q\)は、5-08-1の通り\(Q=nC\Delta T\)だから、定圧では\(Q=nC_P\Delta T\) と書ける。
 右辺第1項の\(\Delta U\)は、定圧に限らず全ての状態変化で\(\Delta U=nC_V\Delta T \)(5-08-1)。
 第2項の\(W\)は、定圧だから\(W=P\Delta V\)(5-06-1)。状態方程式\(PV=nRT\) の両辺の変化量\(\Delta\)をとると、\(P\)一定(定圧)だから \(P\Delta V=nR\Delta T\) すなわち\(W=nR\Delta T\) 。
 したがって(*)は \(nC_P\Delta T=nC_V\Delta T+nR\Delta T \) となる。\(n\Delta T\) で約分すると
 \(C_P=C_V+R \)           (1)
これを「マイヤーの関係式」という。(1)を見ると、定圧の\(C_P\)の方が定積の\(C_V\)よりも大きい。その意味を掘り下げていこう。
 同じ\(\Delta T\)で比較すると、(*)の\(\Delta U=nC_V\Delta T \)は定圧でも定積でも等しい。一方、(*)の\(W\)は定圧では\(W=P\Delta T\)、定積では\(W=0\)(5-06-1)だから、定圧の方が大きい。すると(*)の左辺の\(Q\)は定圧の方が大きい。同じ温度変化\(\Delta T\)で定圧の方が多くの吸熱\(Q\)を要するということは、定圧の方が気体は温めにくいということ。だから温めにくさの度合いのモル比熱\(C\)は定圧の方が大きい。まとめると、
 「定圧の方が定積よりも、した仕事の分だけ余計に熱が必要」となる。入試の題材にしばしば取り上げられる内容だから、しっかり押さえておこう。
 5-08-1の通り、単原子分子気体の\(\displaystyle C_V=\frac{3}{2}R \) 。ゆえに(1)より
 単原子分子気体の定圧モル比熱\(\displaystyle C_P=\frac{5}{2}R \) 。覚えておくと、何かと便利である。

 熱力学第1法則(*)について補足しておく。右辺の\(\Delta U=nC_V\Delta T \)は\(\Delta T \)のみで決まり、状態変化のしかたによらないことは5-08-1で強調した。一方、\(W\)は定圧では\(W=P\Delta V\)、定積では\(W=0\)、断熱なら\(Q=0\)だから(*)より\(W=-\Delta U=-nC_V\Delta T\)、…というように状態変化のしかたによって変わってくる。したがって左辺の\(Q\)も状態変化のしかた次第で変わる。つまり、同じ温度変化\(\Delta T \)について定圧の\(Q\)、定積の\(Q\)、断熱の\(Q\)、…は全て異なるのだ。よってモル比熱も\(C_P\)、\(C_V\)、\(C_{断熱}\)、・・・と全て異なる。というわけで、この単元のタイトルが「いろいろな状態変化のモル比熱」なのである。
 なお、5-08-1の通り\(\displaystyle C=\frac{Q}{n\Delta T} \) で、断熱変化では\(Q=0\)だから、\(\displaystyle C_{断熱}=0 \) 。また、等温変化では\(\Delta T=0\)だから、\(\displaystyle C_{等温}=\frac{Q}{n\Delta T} \)は定義できない(分母の\(\Delta T=0\))。

Posted by AKJ