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1-30-1: 相対速度とはね返り係数

ここでいよいよ2物体の衝突現象に入っていきます。

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ポイント             
・ 観測者Pの速度、加速度をそれぞれ\(v_P, \, a_P \)、
  物体の速度、加速度をそれぞれ\(v, \, a \)として
  Pから見た(Pに対する)物体の相対速度 \(v’=v\)\(-v_P\)  
  Pから見た(Pに対する)物体の相対加速度\(a’=a\)\(-a_P\)
・ 物体1、2の衝突直前の速度をそれぞれ\(v_1, \, v_2 \)、
        衝突直後の速度をそれぞれ\(v’_1, \, v’_2 \)、
  はね返り係数(または反発係数)を \(e\) とすると、
  \(v’_1 – v’_2 =-e(v_1 – v_2) \)
・ \(e=1\)   のときを(完全)弾性衝突
  \(0≦e<1 \, \) のときを非弾性衝突
  \(e=0\)   のときを完全非弾性衝突 という
・ 斜衝突でのはね返り係数は、衝突面に垂直な速度成分で定義する

 通常、物理で物体の速度というときには、観測者(人)は大地や床の上で静止しながら物体を見ている。一方、電車に乗りながら飛んでいる鳥を見ると、鳥本来の速度よりもゆっくり飛んでいるように見えたりする。これを電車(に乗っている人)から見た鳥の相対速度という。つまり相対速度とは、動いている観測者から見た速度である。
 図1で物体が1sあたり15m進んでいるならば物体の速度は\(v=\)15m/s。一方、その間に観測者Pが5m進んでいるとするとPの速度\(v_P=\)5m/s。1s後のP(右側のP)から見ると物体は10mだけPから離れていくように見えるから、
 Pから見た(またはPに対する)物体の相対速度\(v’=v-v_P\) =10m/s
であると分かる。Pから見た相対速度では\(v_P\)を引き算するのだから、「から見た」(に対する)を引き算する公式と覚えよう。 [ 厳密には、1s間速度が一定のままの場合に今の説明は成り立つ。1sの間に速度が変化するときは、速度の変化が無視できるくらい短い微小時間\(\Delta t\)に話を限定し、図1の矢印を\(v\Delta t \, , v_P\Delta t \, , v’\Delta t\) と書き直す必要がある。 ]

図1

 図2のように、物体と観測者Pの動きが逆向きの場合も同様。つまり、1s後のP(左側のP)から見て物体は20=15-(-5) m離れていくように見えるから、\(v’=v-v_P \)の公式はやはり成り立つ。

図2

 同様に相対加速度とは動いている観測者から見た加速度のこと。例えば物体の速度が1sあたり15m/s増加中なら物体の加速度は\(a=\)15m/s\(^2\)。一方、その間に観測者Pの速度が5m/s増加しているならPの加速度\(a_P=\)5m/s\(^2\)。物体の速度が15m/s増える間にもPの速度が5m/s増えるということは、1s後のPから見て物体の速度は相対的に15-5=10m/sしか増えない。これを相対加速度10m/s\(^2\)という。
 Pから見た物体の相対加速度\(a’=a-a_P\) =10m/s\(^2\) やはり「から見た」を引き算する。

はね返り係数 

 ここで物体1,物体2どうしが衝突してはね返る現象を考えよう。  (☆)
 図3で\(x\)軸上を直線運動する物体1、2の衝突直前の速度がそれぞれ\(v_1, \, v_2 \)、衝突直後の速度はそれぞれ\(v’_1, \, v’_2 \)であるとする。

図3

 これをあたかも物体2とともに動く観測者から見たのが図4。
 衝突直前の2から見た1の相対速度は、「2から見た」を引き算して\(v_1 – v_2\) 。衝突が起きるためには物体1が2に追いつかなければならないから図3の\(v_1 > v_2\)、つまり\(v_1 – v_2 >0\)である。これは、衝突前は2から見て1は\(x\)軸の正の向きに動く、2から見て1は近づくという意味。
 衝突直後の2から見た1の相対速度は\(v’_1 – v’_2\) (図4)。衝突後はね返るためには図3の\(v’_1 < v’_2\)(逆に\(v’_1 > v’_2\)なら衝突後に物体1が2を追い越しているという意味になり、これは1が2を突き破るか何かしているということ。(☆)で述べた1と2どうしがはね返る状況としては不適である)。すると\(v’_1 – v’_2<0\)、つまり衝突後は2から見て1は負の向きに動く、2から見て1は遠ざかる。

図4

 ここで衝突直後の相対速度\(v’_1 – v’_2\)が、衝突直前の相対速度\(v_1 – v_2\)の(\( – \))何%に相当するかを考えて、何%にあたる量をはね返り係数(または反発係数) \(e\) という。
 \(v’_1 – v’_2 =-e(v_1 – v_2) \)   (*)
例えば\(e\)=0.3(30%)とは、直後の相対速度が直前の0.3倍の大きさの「はね返り方の度合い」であるという意味。\(e\)の手前にマイナスをつける理由は、\(v_1 – v_2>0\)に対して\(v’_1 – v’_2<0\)だから、つまり、物体2から見て1は衝突前近づくのに衝突後は遠ざかるからである。
 なお、\(v’_2 – v’_1 =-e(v_2 – v_1) \) と表した式は(*)と同値だから、物体1の方で引き算してもかまわない。
 \(e\)の値には2物体の材質などいろいろな要因が関わってくる。例えば鉄と銅の衝突だと\(e\)は1近くになり、木片と粘土の衝突だと\(e\)は0に近いといった具合。
 \(e=1\)   のときを弾性衝突(または完全弾性衝突)という。
 \(0≦e<1 \, \) のときを非弾性衝突という。
 \(e=0\)   のときを完全非弾性衝突という。(*)式に\(e=0\)を代入すると\(v’_1\) \(= v’_2\) となることから、\(e=0\)の場合は衝突直後2物体が並走する、すなわちくっ付いてしまう。

 最後の話として ―― 放物運動している小球が地面に衝突するような場合、衝突面(地面)に対して斜めの方向の衝突が起こる(図5)。この斜衝突でのはね返り係数は、衝突面に垂直な速度成分で定義する。定義するとは、衝突面に垂直な成分を取ることに決めるという意味だ。すなわち図5の\(v,v’\)は用いずに、衝突面に垂直な\(y\)成分\(v_y,v’_y\)を用いる。具体的には物体1を小球、物体2を大地と見なして、(*)を
 \(v’_y – 0 =-e(v_y – 0) \) [ ここで0とは大地の速度の\(y\)成分が0という意味 ]
のように立式する。図5で\(v’_y >0,\: v_y<0\)だから、この立式に何ら問題はない。特に\(e=1\)ならば\(|v’_y| =|v_y| \) 。つまり、地面のような固定面との弾性衝突では、固定面に垂直な速度成分は衝突直前・直後で不変である。

図5

Posted by AKJ