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5-01-1: 温度と熱の違い

熱力学の準備として、温度と熱の違いをしっかり理解しましょう                  

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ポイント             
・ 絶対温度\(T\) [K] = セルシウス温度\(t\) [℃] + 273.15
・ 熱量保存の法則 高温物体の失った熱量 = 低温物体の得た熱量 [J]

 温かい水と冷たい水の違いは何だろうか。それは、原子・分子レベルの微小なスケールでものを見ればはっきりする(図1)。

図1

 水は無数の分子から成る。それら分子は整然としてはいず、速度\(v\)の向きも大きさもばらばらの運動をしている。この無秩序な乱雑な原子・分子レベルの運動を熱運動という。
 温かい水では熱運動が激しく、冷たい水では熱運動が穏やかである。熱すぎるお湯に手を入れれば、お湯の分子が激しく皮膚を叩くから、皮膚はダメージを受ける(やけどをする)。ものの温かさ・冷たさの度合いを温度というが、温度とは熱運動の激しさの度合いに他ならない。
 温度にはセルシウス温度[℃]、絶対温度[K]などがあり、
 絶対温度 = セルシウス温度 + 273.15
  \(T\) [K] =   \(t\) [℃]   + 273.15
つまり、0℃は273.15K、0Kは\(-\)273.15℃。参考までに、\(-\)273.15℃は理論的に予測されている最低温度で、これより低い温度は存在しない。

 さて、温かい水と冷たい水を仕切り1枚を隔てて接触させれば、まもなく温かい水の温度は下がり、冷たい水の温度は上がる(図2)。温度とは熱運動の激しさの度合いだから、温かい水の熱運動は穏やかになり、冷たい水の熱運動は激しくなる、とも言える。

図2

 このとき起こることを平たく言えば(図3)―― 温かい水の分子は熱運動が激しいので、仕切り中最も左の列の分子を激しく叩き、その熱運動を活発にする。活発になった分子は、左から2列目の分子を激しく叩き、その熱運動を活発にする。・・・ やがて、仕切り中最も右の列の分子が活発になる。これが最終的には冷たい水の分子の熱運動を活発にする。
 こうして、温かい水の持っていた熱運動のエネルギーの一部が、仕切りから冷たい水へと受け渡される(移動する)。この高温物体から低温物体へ移る熱運動のエネルギーのことをといい(図2)、熱の量を熱量という。ゆえに熱量の単位にはエネルギーの単位と同じ[J]を用いる

図3

 温度と熱の違いは何だろうか。
―― 温度は熱運動の激しさそのもの。熱は熱運動のエネルギーのうちやり取りされる(移動する)分
―― 温度は1物体の状態を表す量。熱は2物体間でやり取りされる量。
 
 さて、高温物体(温度\(t_1\))と低温物体(温度\(t_2\))を接触させて、全体を断熱容器(熱を逃がさない容器)の中に入れておけば、やがて\(t_1\)と\(t_2\)のどこか間の温度\(t’\)に落ち着く。この最終状態を熱平衡という。このとき、
 熱量保存の法則 高温物体の失った熱量 = 低温物体の得た熱量
が成り立つ。意味は、高温物体の失った熱運動のエネルギーが、ちょうど等しく低温物体へ移動するので、エネルギーの総量は変わらないということ(図2)。つまり、熱量保存則とはエネルギー保存則に他ならない。

 ここで、エネルギー保存則について補足しておこう。1-17-2で「動摩擦力が仕事をすると、その分だけ力学的エネルギーは変化する」と述べた。動摩擦力の仕事は負だから、力学的エネルギーは負だけ変化する、つまり減少する。
 \(\displaystyle \)一方、接触面どうしがこすれ合うことによって、摩擦熱や音のエネルギーなどが発生する。摩擦熱とは、接触面付近の分子の熱運動のエネルギーが増えた分のことだ。このとき、力学的エネルギーの減少分と、他のエネルギー(摩擦熱など)の増加分は等しく、エネルギーの総量は変わらない。
 一般に、自然現象の様々な場面でエネルギーはその種類を変える(変換する)。今の例では、力学的エネルギーが摩擦熱などに変換した。他には光エネルギーが電気エネルギーに変換したり、電気エネルギーが力学的エネルギーに変換したりする。このとき、自然界の全ての種類を含めたエネルギーの総量は決して変化せず一定のままである。これをエネルギー保存の法則という。「力学的」エネルギー保存ではなく、「単に」エネルギー保存というと、いろいろな種類のエネルギー全てを含めた保存則という意味になる。

Posted by AKJ