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1-14-2: 弾性力 <例題>

さっそく弾性力のエクササイズをしてみましょう                      

例題 

 図のように、角度\(\theta \)だけ傾けた板の上端Aに、重さが無視できるばねの一端を固定して、ばねの他の端に質量\(m\)の小物体を取り付けた。ばね定数を\(k\)、小物体と板との間の静止摩擦係を\(\mu \)、重力加速度の大きさを\(g\)とする。


問1 \(\mu =0\)の場合、ばねが自然の長さから\(x_0\)だけ伸びた位置で小物体はつり合った。\(x_0\)はいくらか。正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① \(\displaystyle \frac{mg}{k} \)  ② \(\displaystyle \frac{mg}{k} \sin\theta \)  ③ \(\displaystyle \frac{mg}{k} \cos\theta \)  ④ \(\displaystyle \frac{mg}{k} \tan\theta \)

問2 \(\mu \ne 0\)の場合、ばねの自然の長さからの伸び\(x\)が\(x_0\)より大きくても、その差\(x-x_0\)が小さければ、小物体はつり合いの状態で静止する。このとき、小物体が静止する\(x-x_0\)の最大値はいくらか。正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
① \(\displaystyle \frac{\mu mg}{k} \sin\theta \)  ② \(\displaystyle \frac{2\mu mg}{k} \sin\theta \)  ③ \(\displaystyle \frac{\mu mg}{k} \cos\theta \)
④ \(\displaystyle \frac{2\mu mg}{k} \cos\theta \)  ⑤ \(\displaystyle \frac{\mu mg}{k} \tan\theta \)  ⑥ \(\displaystyle \frac{2\mu mg}{k} \tan\theta \)

解答・解説

問1 \(\mu =0 \)とは、摩擦力を考えなくてよいという意味。1-08-1: 力学攻略の基本 の流れに従って行く。
 まず軸と力(図1)
 次に\(ma=F\)
 \(x\)方向: \(0=kx_0-mg\sin\theta \)    (1)
 ∴ \(\displaystyle x_0=\frac{mg}{k} \sin\theta \)     ②

図1

問2 \(\mu \ne 0 \)とは、摩擦力が働くという意味。
 ここで問われているのは、すべらないための条件。これを求めるために、1-09-1の摩擦力のグラフを思い出そう(図2)。物体を動かそうとする力\(f\)(横軸)が大きくなるにつれ、静止摩擦力\(R\)(縦軸)も大きくなっていく(ⓐ)が、\(R\)が最大摩擦力\(\mu N\)(ⓑ)を超えないうちは、物体はすべり出さない。よって、すべらないための条件は\(R\)≦\(\mu N\)だ。

図2

 つまり、摩擦力がらみですべらないための条件を求めるには、
I. すべっていないと仮定して静止摩擦力\(R\)を運動方程式で求める
II. \(R\)≦\(\mu N \)とする ―― (✩)

 まず軸と力 問1のときののび\(x_0\)よりも問2ののび\(x\)の方が大きいと問題文にあるから、問1の弾性力\(kx_0\)よりも問2の弾性力\(kx\)の方が大きい。ということは、摩擦がなければ物体は斜面をすべり上がろうとする(図3)。摩擦\(R\)はすべるのを妨げるから、斜面平行下向きに働く。(このように、摩擦がなかったらどちら向きにすべるだろうかと考えると、摩擦の向きは分かる)

図3

 次に\(ma=F\)
 \(x\)方向: \(0=kx-mg\sin\theta -R \:\, \)  (2)
 \(y\)方向: \(0=N-mg\cos\theta \: \)     (3)
 (2)より \(R=kx-mg\sin\theta \)
 (1)より得られる \(mg\sin\theta =kx_0 \) を代入して
  \(R=kx-kx_0 \)         (4)
 (3)より \(N=mg\cos\theta \:\, \)      (5)
 (4)、(5)を式(✩)に代入 \(k(x-x_0)≦\mu mg\cos\theta \)
 ∴ \(\displaystyle x-x_0≦\frac{\mu mg}{k}\cos\theta \)     ③

Posted by AKJ